MY
SUNSHINE

ニュース


又吉直樹×佐藤良成×奥山大史監督 スペシャルトークイベントレポート。

2024/08/28(水)

この度、本作のISETAN SHINJUKU ART WEEK特別企画として、8月27日(火)にテアトル新宿(東京・新宿)で試写会が開催されました。上映後のトークには、奥山大史監督と、本作のタイトルの由来となった主題歌「ぼくのお日さま」を提供し、音楽も担当されたハンバート ハンバートの佐藤良成さん、お笑い芸人の又吉直樹さんが登壇し語り合いました。

又吉さんが14、5年前からハンバート ハンバートのファンであったことが、このトークイベント実現のきっかけ。又吉さんは、「もともと、この『ぼくのお日さま』という曲がとても好きでした。僕は子どもの頃から人前で話すのが苦手で、言いたいことが頭にあっても、それを言語化するのが難しく、考えているうちに会話が進んでしまって『言えなかった…』ということが多かったんです。その感覚をこの曲を聴いた時に思い出し、映画のタイトルがこの曲だと知って“言葉”に注目して観ていたら、言葉だけでは表現できない感情が映像で見事に表現されていると感じました」とコメント。

また、「少年がアイススケートをする少女に夢中になるけど、それが少女に夢中なのか、アイススケートに夢中なのか、どちらとも言えない――言語化できない感情が表現されていると思いました。少女のコーチへの感情も、簡単に名前をつけてしまうと、その感情が持つ多様性が失われてしまうものですよね。そういう複雑でありながら、よくわかる、言葉にできない感情が物語と映像で表現されていました」と絶賛し、「映画を観終わって、監督が『ぼくのお日さま』という曲を選んだ理由がわかった気がしました」と語りました。

奥山監督は、7年間フィギュアスケートをしていた経験を基に、スケートを題材とした映画を構想。しかし、脚本作りは当初難航していたようで、作業を進める中で、「ただの思い出再現ムービーになってしまうのではないか…」と思い悩んでいた時に出会ったのが、2014年に発表されたハンバート ハンバートの8thアルバム「むかしぼくはみじめだった」に収録されている「ぼくのお日さま」だったそう。

奥山監督は、「その時の鬱屈した気持ちに寄り添ってくれる曲でした。最初はこの曲を映画に使うつもりはなかったのですが、何度も聴いているうちに、書いていたプロットがどんどん曲に寄り添っていき、最終的に『この曲をエンドロールに使わないといけない』という使命感に駆られました(笑)」と語り、「ある程度脚本が書けた時点で、ハンバート ハンバートの佐藤さんと(佐野)遊穂さんに、これまでの経緯と『この曲を主題歌と映画のタイトルとして使わせていただきたい』という手紙を書きました。約1か月後、『主題歌もタイトルもどちらも快諾します』とお返事をいただけた時は、とても嬉しかったです」と振り返りました。

佐藤さんはそのやりとりについて、「手紙も嬉しかったのですが、一緒に送ってくださった『僕はイエス様が嫌い』を見て、本当に素晴らしかったので、『この監督とはぜひ一緒に何かをやりたい』と思い、『もちろん、喜んで』という気持ちになりました」と笑顔。

又吉さんは「奥山監督がちゃんと手紙を書くというのがすごいと思いました。イメージや感覚だけを拝借しようとする人もいるかもしれませんが、本人にしっかりと伝えるという誠実さが素晴らしいです。作品に対する覚悟が決まっているのだと思います」と称賛し、佐藤さんも「本当に嬉しかったです。アイディアを黙って拝借するのが一般的な中で、正攻法で真正面から伝えてくださったのが嬉しかったです」とうなづきました。

ちなみに、佐藤さんは主題歌だけでなく、劇中の音楽も手掛けており、「こちらからお願いして『よかったら音楽も作りますよ』と言いました」と自身の提案だったことも明かしました。

奥山監督は「湖のシーンで、ゾンビーズの『Going Out of My Head』が流れるのですが、脚本では別の曲になっていました。『ぼくのお日さま』の歌詞にある『ロックがぼくを…』という部分について話し合った際、佐藤さんがいろいろな曲を提案してくださり、最終的に『Going Out of My Head』に変更しました。佐藤さんの提案が、映画の様々な部分で活かされています」と感謝を述べました。

又吉さんは、映画の中で特に好きなシーンとして、主人公タクヤ(越山敬達)がアイスホッケーのゴールキーパーを務めるも、上手くできないシーンを挙げ、「僕は子どもの頃、サッカーをしていましたが、スパイクも持っていなくて、なかなか上手くできなかったんです。みんなが順番にキーパーをやるのですが、(タクヤがキーパーをやるシーンを)見ていて苦しくなりました。あの不安定な気持ち、どうしようもない心細い気持ちに、自分が夢中になれるものを見つけるという流れがよくわかりました。それは『ぼくのお日さま』という曲の中の“ロック”のようなもので、僕にとっては音楽や本、お笑いがその役割を果たしていたのだと思います」と、自らの経験を重ね合わせました。

観客の前で奥山監督と語り合う初めての機会となった佐藤さんは、完成した映画の感想を問われると、「うまく言えないよ…(苦笑)」と照れながら、「本当に良い映画だと思います。一番好きなシーンは、あるシーンでガラス越しにタクヤを映すところです。会場のガラスに水玉模様があるのですが、そこがすごく好きで、そのシーンで毎回ギューっとなります」と語りました。
また、又吉さんも「良いですよね。僕はその後の放課後のシーンも好きです」と共感。二人で好きなシーンや感想を語り合っているうちに、あっという間に刻が過ぎトークイベントは終了しました。

最後に又吉さんは観客に向けて、「素晴らしい映画なので、ぜひ友達に伝えていきたいと思いますので、一緒に広めていきましょう」と呼びかけ、佐藤さんも「一度だけでなく、何回も観て良さを感じてほしいので、ぜひ布教してください!」と語りました。
奥山監督は「佐藤さんとこうしてみなさんの前でお話ができて嬉しかったですし、又吉さんの感想を伺えてとても嬉しかったです。素敵な時間をありがとうございました」と感謝を述べ、会場は温かい拍手に包まれました。

『ぼくのお日さま』は9月6日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテにて先行公開され、9月13日(金)より全国公開されます。
また、ハンバート ハンバートの佐藤さんが手掛けた『ぼくのお日さま』オリジナル・サウンドトラックは、9月11日より発売されます。

引き続き、公開までどうぞお楽しみに!

映画『ぼくのお日さま』

《あらすじ》
吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤ(越山敬達)は、「月の光」に合わせフィギュアスケートを練習する少女・さくら(中西希亜良)の姿に、心を奪われてしまう。ある日、さくらのコーチ荒川(池松壮亮)は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習をつきあうことに。しばらくして荒川の提案から、タクヤとさくらはペアを組みアイスダンスの練習をはじめることになり……。

監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩ほか
主題歌:ハンバート ハンバート 
本編:90分
配給:東京テアトル 
(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

9/6 (金)〜 9/8(日)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて3日間限定先行公開
9/13(金)より全国公開