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映画『ぼくのお日さま』メイキング付きアンコール上映 イベントレポート

2025/08/08(金)

『ぼくのお日さま』Blu-ray&DVDの発売を記念して、8月3日(日)、テアトル新宿にてメイキング付きアンコール上映が行われました。
上映後には、奥山大史監督と、『Making of ぼくのお日さま -聖なる記憶にふれる-』を手がけた本田吉孝監督によるトークイベントが実施されました。
今回は、そのトークイベントの模様をお届けします。

2024年9月6日の先行公開から2025年1月16日のフィナーレ上映会まで、約5ヶ月にわたりロングラン上映が続いたテアトル新宿。
約7ヶ月ぶりの上映にあたり、奥山監督は、「こうしてこの映画と共にまた戻ってこられたこと、とても嬉しく思っています。この壇上に立つのは何回目だろう ? と数えてみたら、今日で14回目で。こうして再びこういう機会をいただけて、本当にありがたいです」と挨拶。

今回、メイキング『Making of ぼくのお日さま』が初上映となった本田監督は、イベント告知で奥山監督と並んで名前が記載されていたことに恐縮しつつ、「普段は映画本編やCMの編集を主にしていますが、今回はご縁があって『ぼくのお日さま』本編には関わっていないのですが、メイキングを担当させていただきました。本編の“おまけ”というと語弊があるかもしれませんが、Blu-ray&DVDの特典として制作したものが劇場で上映されるのは、とても感慨深いです」と語りました。

「映画の余韻を断ち切るように、上映直後にメイキングがかかるというのは、映画ファンとしてどうなんだろう」と懸念していたという本田監督も、来場者のうち4割が『ぼくのお日さま』初見、6割が2回目以降だったことについて、「めちゃめちゃ愛されてる映画ですね」と笑顔に。

今回の上映について、奥山監督は、「メイキングと併映できたのは本当に嬉しく思っています。こういう規模の映画には、理想的な公開のルートのようなものがある気がしていて。映画祭でお披露目し、その後、劇場で丁寧にかけてもらい、二番館・三番館を巡回して、落ち着いてきた頃に配信が始まり、円盤が出る。それと同時に、最初に上映された劇場に戻ってくる。そのルートをたどれるかは、観客の皆さんがそのステップごとに映画と一緒に歩んでくださることが大前提だと思うので、それがゴールまで来られた、今回実現できたというのは、本当に嬉しいですし、皆さんのおかげだと思っています」と感謝を伝えた。

本田監督にメイキングを依頼をしたきっかけは、関根光才監督の『太陽の塔』というドキュメンタリー

奥山 : あの作品って、監督公募だったじゃないですか ? 僕、応募してたんです。

本田 : えっ、応募してたの ?

奥山 : はい。当時大学生で、「監督をやってみたい」と思っていたときに、パルコが公募していたので、すぐ応募して。最終の6人にまで残ったんですよ。「やった ! 」と思って、最終選考のメンバーを見たら、関根光才監督の名前を見つけて、「なんじゃい ! めちゃめちゃすごい人が入ってるじゃん」と思って。

本田 : (笑)

奥山 : 結果、関根さんに決まり、完成した作品を観たら素晴らしくて。特に編集と撮影がすごくいいなと思い。クレジットを見て、本田さんと上野千蔵さんって方なんだ、と思ったのが、もう何年前ですかね ?

本田 : 7年前、2018年公開ですね。

奥山 : このお二人といつか仕事をしたいと思い、千蔵さんとはご一緒できて、本田さんにも、事あるたびに相談させてもらっていたんですけど。
今回、メイキングを作ることになって、素材は膨大にあるけれど、どうまとめようか、と悩み、本田さんにお願いしたいと思ったんです。
でも引き受けていただけるとは思っていなかったので、よかったです。

本田 : 大変でしたね。

奥山 : そうですよね(笑)。

(会場笑)

本田 : 通常、メイキングって、撮影したカメラマンが編集するのがセオリーとしてあるじゃないですか。僕は普段、映画本編やCMの編集をやっていて、現場には行かず素材を受け取って行うことの方が多いので、そこは問題なかったんですけど、今回は、撮影中のメイキング素材だけで88時間、スケート練習やオーディションなどを含めると151時間もあって。素材を全部見るだけでも1週間かかるじゃんと思って。
それでも引き受けたのは、奥山大史という監督に興味があった、というのが一番大きくて。『僕はイエス様が嫌い』も『ぼくのお日さま』もいち映画ファンとして観ていて、「この若さでどうしてこんな映画が撮れるのだろう ?」と、その秘密を知りたかったんです。

理想のメイキングとして奥山監督が挙げたのは、伊丹十三監督の『マルサの女』のメイキング『マルサの女をマルサする』

奥山 : これは周防正行監督によるものなんですが、素晴らしくて。映画自体が“お金”を扱っているので、メイキングでも予算表がバーっと出てきて。本編のテーマとリンクしていて、メイキングが一つの作品として成り立っている。こういうメイキングを作りたいんですよね、ってプロデューサーに話したら、なんか苦笑い、みたいな(笑)。

本田 : あれは映画として上映されてますもんね。当時のメイキングは番組制作のスタイルで、数名で現場に常駐して作っているものもありましたが、昨今の映画はそこまでの予算がないから、そこまでできなくて。とにかく全部撮っておいて、編集でどうにかしよう、というやり方になるんですけど。今回も何から何まで撮ってあるから、素材が膨大で。
奥山さんは細かい方なので、メイキングもディレクションするのかな、と思ったら完全に丸投げで、「好きにしてください」って言われて。

奥山 : そうでしたね(笑)

本田 : 僕も「好きに作っていいならやります」という条件で始めて、最初に観てもらえる状態に仕上げるまでに、だいたい1ヶ月弱かかりました。
総尺30分00秒のもの(後注:本編が90分00秒ジャストという話を受けて、対抗心でやりました)を深夜1時半ごろにポンっと送ったら、「立て続けに3回見ました ! 」というメールが朝4時に届いて。ホッとしましたね。

奥山 : 最初にいただいた構成表で、池松さんの言葉と僕の言葉をつないで、そこにどんな映像が載るか、まとめていらしたじゃないですか。あれは、映像で編集する前に、まず言葉で編集している、という感じなんですか?

本田 : そうですね。具体的な話になりますが、渡された素材に池松さんのインタビューが入っていたんです。それを最初にまず見て、「これは物語になるな」と感じました。ちょっと変な話ですが、その段階で、今作の最初の言葉と最後の一言はもう決めていました。

奥山 : そうなんですね。

本田 : さらに、僕自身が観たいと思うドキュメンタリーは、映画のディティールを具体的に解説していくような内容のものなんです。そうすると、やっぱり奥山さんのインタビューを撮るしかない、と思い、間を埋めるようにインタビューを撮っていきました。2時間半ぐらい撮りましたよね。

奥山 : 長かったですけど、楽しかったです。

本田 : 最初は1時間ぐらいの予定だったんですが、「聞きたいことを全部聞いてやろう」と思って。その上で、池松さんと奥山さんのインタビューでどう構成していくかを、言葉で整理していきました。
もうひとつ、奥山さんが監督・撮影・脚本・編集を手がけているじゃないですか。なので、その4つをメインの章にしたいと思っていました。音楽やハンバートハンバートさんの話は、いろんなメディアですでに取り上げられていたので、そこはあえて外しました。

奥山 : そう、取材でよく聞かれることが、この映画にはいくつかあって。本田さんにインタビューしていただいた頃には、もう質問されたら思考を動かさずとも口から出るようになっていて(笑)。
でも、本田さんはいろんなことを聞いてくださって。結果的に使われたのは、たとえばカラーフィルターの話や、一緒に編集をしてくれたティナさんの話とか、他ではほぼ話していない、より深いところまで話せて、それが本当によかったですね。

本田 : かなりマニアックな内容にはなっていますよね。それが一般の方にどこまで響くのかは分からないですが、「自分が観たいメイキング」を作ったという感じです。

奥山 : いや、本当に楽しめるものになったと思いますよ。

(会場から共感の拍手)

奥山 : あと、カンヌのメイキングも収録されていて、そちらもすごくかわいいので、ぜひ。

本田 : 最初は、皆さんがカンヌに行ったときの旅行記のような映像を、メイキング本編に入れてほしいと言われていたんですけど。

奥山 : そうでしたね。

本田 : でも、ちょっとトーン的に合わなくて。スケジュールの都合もあり、「カンヌ編は入りませんね」と言ったら、「じゃあ別で作りましょう」と言われて。
正直、「じゃあカンヌは別の人に頼みます」って言ってくれないかな、と思ってたんですけど(笑)。

奥山 : 「別の人に」とは言わず、「別で作りましょう」で終わるという(笑)。
あと、池松さん、越山くん、希亜良ちゃん、僕の4人でコメンタリーも収録したんですが、本編の前に腕試しというか練習を兼ねて、メイキングのコメンタリーも録ってみたんです。それがなかなか面白くて。今日観てくださった方も、Blu-ray、DVDを購入していただけると、そのコメンタリーも楽しめます(笑)。

(会場笑)

奥山 : でも、本当にいろんなものが込められたな、と。

本田 : ここまで凝っている作品も、なかなかないですよ。

奥山 : そうですね。年々、円盤が売れなくなっている分、デザイン面や特典の内容についての制約も多くなってきていますが、今回に限っては、やりたかったことを全部やらせてもらえたので、本当に感謝しています。
これから家でも見てもらえることになるんですけど。あ、すごい話が変わりますけど、テレビって「滑らかモード」みたいなのあるじゃないですか。あれって、かなり印象が変わりますよね。

本田 : 変わりますね。なので、テレビの設定の「自動」ってやつは、全部オフにする。

奥山 : そうですよね。僕も全部オフにしてるんですけど、初期設定がオンのままだったりしますよね。最近、久しぶりにテレビを買い替えたら、オンになっていて。この作品のBlu-rayのチェックをしたら、全然違う印象になったので、ぜひオフにして観てほしいです。
しかも「モーションフロー」とか、メーカーによって名称が違うのも問題な気がしますが、トム・クルーズも「オフにしてほしいです」みたいな動画を出してました。

本田 : トム・クルーズと同じこと言ってます(笑)。

奥山 : ですね(笑)。

ラストシーンについて  (ネタバレを含みます)

本田 : 今日、久しぶりに映画館で『ぼくのお日さま』の本編を観て、セリフが少ない映画だからこそ、劇場の音響の空気感ってやっぱり素晴らしいと、改めて感じました。

奥山 : テアトル新宿は特に素晴らしいですよね。音が近く感じられるというか。劇場ならではの良さがあるし、一方で家で観返すと、また別の良さも感じるんですよ。劇場で観たあと、家で改めて観ると新しい気づきがある。そういう観る環境によって感想が左右されるのも映画の面白さですね。

本田 : ラスト、タクヤが何か言おうとして映画が終わるじゃないですか。

奥山 : はい。

本田 : でも今日、「ここでなら、聞けるかも !? 」と思ったくらい、音が良かった(笑)。
実は、あのときタクヤが何て言ったのか、インタビューで聞いたんですが、それは話さない方がいいですか?

奥山 : いや、全然大丈夫です。トークショーでは話してるんですよ。以前、越山くんと希亜良ちゃんと3人でトークしたら、すごいホワホワした回になって(笑)。せっかく来てもらったから、(お客さんに)何か持ち帰ってもらわないとと思って、最後のシーンで、「タクヤが何を言うか、越山くんに任せたよね」って話をしたんですよ。何かを言おうとしないと芝居にならないので。
で、越山くんが言ったのは、「また一緒に滑ろう」って。すごくいいなと思って、特に直さなかったんですけど、言い方とか言葉の詰まり方で、何回もテイクを重ねていたら、メイキングにもチラッと映っていますが、泣いちゃって。

本田 : あれは、できなかったから泣いちゃったんですか ?

奥山 : いや、本人にあとで聞いたら、「なんでもいいって言ったのに、言葉がやっぱり違うんじゃないか」みたいな、「なんでこの人は言ってくれないんだろう」みたいな。そういうことだったみたいです(笑)。

(会場笑)

本田 : 「なぜ泣いたのか、説明した方がいいかも」という話も出て、テロップを入れる案もありましたよね。でも僕は理由を知らないまま、素材を見たときに「ここで泣いてるって、きっといろんな感情があるんだろうな」と思ったんです。だから観た人に委ねたいなと。自分もあの映像を観てグッときたので。
でも今の話を聞いちゃうと…ちょっとグッとこないですね。

奥山 : (笑)。でも映像を観て、僕がグッときたのは、あれ、慰めていたのが池松さんなんですよ。あの日、池松さんは撮影がなかったのに、2人がクランクアップだからと、わざわざ車で来てくれて。僕はもう子どもが泣くと、本当にどうすればいいか分からなくて。そしたら、池松さんがサッと近寄って、何か話して、肩をポンと叩いてあげて。そのおかげで越山くんも持ち直して。本当に助けられました。
テロップを入れようかと思ったのは、一瞬、池松さんが泣かせてるようにも見えるので(笑)。大丈夫かな、と思ったんですけど、でも本田さんのおっしゃるように、いろんな感情がこの映画を作る過程であったんだな、と伝わることも大事だと思って。

本田 : やっぱりああいう素材を見つけたら、「絶対使ってやろう」って思いますし、どんな音楽をつけようか、と考えますよね。

奥山 : 「このカットつながるかな…」と僕が悩んでるカットもあるじゃないですか。ああいうことばっかり現場で言っていた気がしますけど、そんな姿まで使われていたので「いいですねー」と思って(笑)。

本田 : メイキングでスタッフが映ることって少ないんですけど、そこは映したいし、なるべく使ってあげたい。
僕は編集という立場なんで、メイキングやプロダクションノートにも登場しない。編集という行程すらあまり知られていないと思うんですけど、今回は、監督とティナさんが編集しているシーンもあったり。映画っていうのは、いろんなスタッフによって、こうやって作られているということが伝わればいいな、という思いで作りましたね。

最後にお二人からのメッセージ

本田さん : 本日はありがとうございました。映像作品って、お客さんのリアクションを直接見ることがほとんどないコンテンツなので、今回はすごく貴重な機会をいただいたな、と思っています。
編集はとっても大変でしたが、奥山さんに感謝したいと思います。ありがとうございます。

奥山さん : 本当に楽しかったです。本田さんはご自身からは宣伝されないので、僕から。池松さんが出演されている映画『フロントライン』を本田さんが編集されていて、もう素晴らしかったので、ぜひ。

本田 : まだ劇場で上映しています。あと、『太陽の塔』もAmazonプライムで配信されているので。

奥山 : 本当に、そちらもぜひ。そして、『ぼくのお日さま』のBlu-ray、DVDを購入してくださった方も多いと思いますが、もうすごく気に入ってます。スリーブの紙選びとかも、すべて関わらせてもらって。
デザインは、岡本太玖斗さんという方にお願いしていて、もう彼にはお世話になり続けました。エンドロールもやってもらって、そこから、ポスタービジュアルもお願いして、切手も作ってもらい、Blu-ray&DVDもパッケージだけでなく、メニュー画面に、メイキングのテロップも…とか言ってるうちに、だんだん彼も「今、自分は何を作ってるんだろう ?」みたいな感じだったかもですが…。

本田 : なんか、基本的に人使いが荒いですよね(笑)。

奥山 : いやいやいや(笑)。一度気に入ると、もう全部お願いしたくなっちゃうんです。結果、本当にがんばっていただいて、素晴らしいBlu-ray&DVDになったので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。

『ぼくのお日さま』Blu-ray&DVDは好評発売中 !
さらに、8月29日(金)〜 9月4日(木)の1週間限定で、テアトル新宿にてメイキング付きアンコール上映も決定 !

Blu-ray&DVDには、特典映像もたっぷり収録されています。
ご自宅でご覧になる際は、テレビの設定をぜひ「オフ」にして、ご自宅でも劇場でも、『ぼくのお日さま』をお楽しみください !

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