ラストシーンについて (ネタバレを含みます)
本田 : 今日、久しぶりに映画館で『ぼくのお日さま』の本編を観て、セリフが少ない映画だからこそ、劇場の音響の空気感ってやっぱり素晴らしいと、改めて感じました。
奥山 : テアトル新宿は特に素晴らしいですよね。音が近く感じられるというか。劇場ならではの良さがあるし、一方で家で観返すと、また別の良さも感じるんですよ。劇場で観たあと、家で改めて観ると新しい気づきがある。そういう観る環境によって感想が左右されるのも映画の面白さですね。
本田 : ラスト、タクヤが何か言おうとして映画が終わるじゃないですか。
奥山 : はい。
本田 : でも今日、「ここでなら、聞けるかも !? 」と思ったくらい、音が良かった(笑)。
実は、あのときタクヤが何て言ったのか、インタビューで聞いたんですが、それは話さない方がいいですか?
奥山 : いや、全然大丈夫です。トークショーでは話してるんですよ。以前、越山くんと希亜良ちゃんと3人でトークしたら、すごいホワホワした回になって(笑)。せっかく来てもらったから、(お客さんに)何か持ち帰ってもらわないとと思って、最後のシーンで、「タクヤが何を言うか、越山くんに任せたよね」って話をしたんですよ。何かを言おうとしないと芝居にならないので。
で、越山くんが言ったのは、「また一緒に滑ろう」って。すごくいいなと思って、特に直さなかったんですけど、言い方とか言葉の詰まり方で、何回もテイクを重ねていたら、メイキングにもチラッと映っていますが、泣いちゃって。
本田 : あれは、できなかったから泣いちゃったんですか ?
奥山 : いや、本人にあとで聞いたら、「なんでもいいって言ったのに、言葉がやっぱり違うんじゃないか」みたいな、「なんでこの人は言ってくれないんだろう」みたいな。そういうことだったみたいです(笑)。
(会場笑)
本田 : 「なぜ泣いたのか、説明した方がいいかも」という話も出て、テロップを入れる案もありましたよね。でも僕は理由を知らないまま、素材を見たときに「ここで泣いてるって、きっといろんな感情があるんだろうな」と思ったんです。だから観た人に委ねたいなと。自分もあの映像を観てグッときたので。
でも今の話を聞いちゃうと…ちょっとグッとこないですね。
奥山 : (笑)。でも映像を観て、僕がグッときたのは、あれ、慰めていたのが池松さんなんですよ。あの日、池松さんは撮影がなかったのに、2人がクランクアップだからと、わざわざ車で来てくれて。僕はもう子どもが泣くと、本当にどうすればいいか分からなくて。そしたら、池松さんがサッと近寄って、何か話して、肩をポンと叩いてあげて。そのおかげで越山くんも持ち直して。本当に助けられました。
テロップを入れようかと思ったのは、一瞬、池松さんが泣かせてるようにも見えるので(笑)。大丈夫かな、と思ったんですけど、でも本田さんのおっしゃるように、いろんな感情がこの映画を作る過程であったんだな、と伝わることも大事だと思って。
本田 : やっぱりああいう素材を見つけたら、「絶対使ってやろう」って思いますし、どんな音楽をつけようか、と考えますよね。
奥山 : 「このカットつながるかな…」と僕が悩んでるカットもあるじゃないですか。ああいうことばっかり現場で言っていた気がしますけど、そんな姿まで使われていたので「いいですねー」と思って(笑)。
本田 : メイキングでスタッフが映ることって少ないんですけど、そこは映したいし、なるべく使ってあげたい。
僕は編集という立場なんで、メイキングやプロダクションノートにも登場しない。編集という行程すらあまり知られていないと思うんですけど、今回は、監督とティナさんが編集しているシーンもあったり。映画っていうのは、いろんなスタッフによって、こうやって作られているということが伝わればいいな、という思いで作りましたね。
最後にお二人からのメッセージ
本田さん : 本日はありがとうございました。映像作品って、お客さんのリアクションを直接見ることがほとんどないコンテンツなので、今回はすごく貴重な機会をいただいたな、と思っています。
編集はとっても大変でしたが、奥山さんに感謝したいと思います。ありがとうございます。
奥山さん : 本当に楽しかったです。本田さんはご自身からは宣伝されないので、僕から。池松さんが出演されている映画『フロントライン』を本田さんが編集されていて、もう素晴らしかったので、ぜひ。
本田 : まだ劇場で上映しています。あと、『太陽の塔』もAmazonプライムで配信されているので。
奥山 : 本当に、そちらもぜひ。そして、『ぼくのお日さま』のBlu-ray、DVDを購入してくださった方も多いと思いますが、もうすごく気に入ってます。スリーブの紙選びとかも、すべて関わらせてもらって。
デザインは、岡本太玖斗さんという方にお願いしていて、もう彼にはお世話になり続けました。エンドロールもやってもらって、そこから、ポスタービジュアルもお願いして、切手も作ってもらい、Blu-ray&DVDもパッケージだけでなく、メニュー画面に、メイキングのテロップも…とか言ってるうちに、だんだん彼も「今、自分は何を作ってるんだろう ?」みたいな感じだったかもですが…。
本田 : なんか、基本的に人使いが荒いですよね(笑)。
奥山 : いやいやいや(笑)。一度気に入ると、もう全部お願いしたくなっちゃうんです。結果、本当にがんばっていただいて、素晴らしいBlu-ray&DVDになったので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。